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ロナウジーニョに似てるとか言うな
映画における企画、制作、上映までのすべての過程を自らの手で気持ちを込めてお届けする映画製作集団、「ちりめんプロダクション」の総監督である近藤の日々を綴っている。
DATE: 2006/08/26(土)   CATEGORY: 未分類
『解放への発火装置』
ワンエイト前に上がったばかりの気のいい雨のおかげで、外灯の滲んだ光を全身に浴びたアスファルトが豊潤と呼ぶに相応しい輝きを放っており、ステージにこれだけあれば申し分ないといった調子の彼(彼女)らが喜びに震える体を抑えられぬかのように踊り続けることで、高層ビルディングに囲まれた新宿西口公園をまったくの未知の場所に変容させていた。私が、その男とその男がリーダーとして率いているダンスチームと出会ったのはそんなふうにしてである。私と同年齢のその男―YUSUKEはダンスの振りの中で地面に置いた木の椅子に、同形のもう1脚の椅子を逆さまにして上に載せ、いとも容易くその上で倒立して、更に足をぴたっと180度に開いてみせた。たった1曲で、ダンサーとして天賦の才能とおそらくそれに負けずとも劣らぬだけの訓練(練習だとかレッスンという単語よりこの方が断然しっくりくる)を課していることが判別可能なYUSUKEに対して私が抱いた唯一の疑問は、その当時組んで間もなかったはずのSPEACE ARTというチームの形態へのものだった。それぞれのメンバーも確かに個性は持っているであろうとはいえ、個別のダンサーとしてYUSUKEと同レベルまで達していないように私には思えたからだ。全員自分より年下、高校生を多く含むそのメンバーとやるより、何よりも己のスキルを向上させることだけを考え、自分より上、せめて同等のレベルを持つダンサーに混じって誰にも負けぬ最強のダンサーを目指すべきだと、私ならそうする、と。そして無責任にもYUSUKEに直接詰め寄るようにずけずけ云ったりもした。だが、YUSUKEはそんな私の考えに、強く反論するわけでも、曖昧に同調するわけでもなく、真っ直ぐな視線だけを寄越し、「これでいいのだ!」と示すかのごとく、まだ幼さ残るメンバーと共に何度も何度も同じ振りを繰り返した。彼はそれからも自分を信頼する仲間たちを家族のように愛し、レッスンスタジオでは小学生にも真剣にダンスを教え続けている。7年もの歳月を経て、YUSUKEが積み重ねてきた一つの成果を、来週9月2日のSPEACE ARTの自主公演『Rhythmic Park』でわれわれは目にすることが出来る。その一つ一つすべてをじっくりと作り上げてきたYUSUKEが人生を懸けて出した答えを、正面から受け止めた上で私は自分の考えが明らかな間違いだったことを素直に認めざるをえないかもしれないし、そうなってほしいと胸を躍らせ、その日を迎えることにしよう。もう一つ、それと同じくらいに我が新作『ポニーボーイ、バニーガール』に出演してもらったSPEACE ARTのメンバー、CHEMIさんの舞台での輝きが見られることもこの上なく楽しみである。まして、私のこの意地汚い言葉の連なりが、SPEACE ARTのパフォーマンスにおいて、全部蛇足になるであろうことは始めから約束されている。
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DATE: 2006/08/18(金)   CATEGORY: 未分類
『大阪で会いましょう』
季節はずれの雪だるま、見事なまでにゴロゴロと。いや、よーく見てみよう。それは火の車というんだよ。借金を返すためにまた新たな借金をする。気がつけば首が回らなくなり、仕方なく首を吊る。くわばらくわばら。まぁ、そんなことありえないだろうが、万が一そうなった時には名誉の戦死だったと思ってやって下さい。さて、トップページでも告知してある通り、3日後、つまり21日から9月の9日まで、大阪西天満のギャラリーwks.にて狂人画家コーンこと近藤晃弘氏と2人展やります。ほとんどの人がこのブログをさらっと見て通りすぎるだけのようなので、ぜひちりプロのサイト、トップページもチェックしてやって下さい。新作『ポニーボーイ、バニーガール』の情報などちょくちょく更新されておりますです。と今、「2人展」と何でもないようにしたり顔で記したが、これは必ずしも正確な記述ではない。確かにお気づきのように、私とコーンは共に「近藤」という同じ姓を持ちはしているが、一切の血縁関係はここにはない。剛と光一のようなものだ。それならどちらがどちらにあたるかは、また今度議論するとして、片や映画作家、方や絵描きがたまたま大阪の芸大で出会い、互いの作品にシンパシーを感じ、じゃぁ二人で何かやろうよ、と語り合ってとうとう7年越しに夢を実現させた、などというお上り気分でやる「2人展」では断じてない。ここではまず「2」という人称すら意味を欠いている。それぞれが各々に作品を作って並べるのでも、共同作業などという牧歌的な雰囲気の作品をどかっと一つ展示するわけでもなく、そこでは何の抽象的な表現をも含まぬ、語義そのままの「1人」の近藤某が生み落とした子供をみなさまにお見せします。ただ、近藤某とすると、よもすると人が裏読みしかねない、理屈づけ出来てしまう人格を持った理解可能な奴と勘違いされてもしゃくなので、我々二人は、この一匹の怪獣に『ドクザラゴロモ』という学術名を与えることにする。そしてこの怪獣が生み落としたものを、無論「絵だ!」とも、はたまた「映像だ!」とも、ましてや「芸術だ!」などとは決して呼ばせはしまい。
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DATE: 2006/08/12(土)   CATEGORY: 未分類
『分かちえぬ境界線』
もう五年も前の、拙作『カガヤクゼント』の東京上映後のアンケートで、ほとんど会話も交わしたことの無い高校の同級生だった女の子に、「これは映画とは呼べないと思う。」と書かれて酷く激怒したことをよく思い出す。どうせ、トムさんやショーンさんが出てくるような、もしくはジブリさんが作ったような映画しか見てねぇんだろ。ゴダールも鈴木清順もジャン・マリー・ストローブも見てない人間が、映画とは何かを口にするんじゃねぇよと、血気盛んな若かりし近藤少年は思ったわけであります(今でもそう思わなくもない)。少なくとも私はこの人たちが作る映画こそ、真の映画だと信じているし、常に映画の限界をそれこそ暴力的という他ないやり方で拡張させてしまう映画に少しでも近づきたいと欲望して映画を作っている。
周りのあまりの誉めっぷりと、実に多くの観客を動員しているらしいとのことでやっと『ゆれる』を新宿武蔵野館で観る。西川美和監督の前作『蛇イチゴ』も決して嫌いな作品じゃなかったし、そこまで期待に胸膨らませていた訳ではなかったが、観た直後の感想としてはどこか拭い去れないようなごろっとした不満だけが残った。これは、アカデミー作品賞とやらを獲った『クラッシュ』を観た時にも感じたもので、その両者の共通点は、それが本当に良く出来た作品だということ。脚本が非常に丁寧に練られているから、一つ一つの伏線が映画の後半、憎いほど適確に決まってくるし、役者への演出もほぼ申し分ない。だからである。問題はこの‘良く出来た’‘まとまりのある’映画の、驚きと興奮を欠いた野心のなさといえばいいだろうか。これでは今まで作られてきた数ある映画群を脅かすこともないし、何も付け加えることすら出来ない。これは私個人の問題(それも現実離れした無謀な)であって、大抵の人はこの良く出来た映画をごく単純に楽しんでいただけたらいいと思う。何よりほとんどの人がこういった映画すら見ていない現状なのだから。ただ私はやはり、もはや映画とは呼べないような、極めて危険極まりない映画を作りたいと改めて思う。たとえ多くの人に「こんなの映画じゃないよね。」と云われようとも。
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DATE: 2006/08/01(火)   CATEGORY: 未分類
『暑中お見舞い申し上げます』
拝啓、相棒様 どうやら梅雨も明けていよいよ僕らの展覧会もすぐそこになりましたね。あの撮影からもう1ヵ月たったなんてとても信じられません。もちろん、君があの場所にいなかったらどうなっていたのだろうと恐くもなります。突然ですが、初めて君に会ったのはいつのことだったか、僕はたまに判らなくなるのです。たぶん雑居ビルの一室、他にも大勢の人がいた。お互い、緊張していたみたいだ。いや、それはどこかの屋上、そうだやっぱり他にも何人かいた、それだけは憶えている。僕があまりに挑戦的で、君は戸惑っているみたいだった。と次の瞬間、「いやいや、本当に初めて会ったのは生まれてすぐじゃないか。あの白いカーテンを忘れたのかい?」君が教えてくれる声がする。僕にはその時の記憶はないが、君がそう云うのならそれが正しいのかもしれない。少なくとも僕が本気で映画を作り始めた時から、今の今まで君は僕と一緒に戦ってきてくれた。「あれだけの優秀なスタッフとあれだけの素敵な役者さんたちを束ねる頂点にいるあなたはすごい。」と君はメールで書いてくれたけど、それは常に現場の君が穏かな顔で僕を見守ってくれていて、常に現場の君が分かりやすい言葉で僕の考えをみんなに翻訳してくれるから、現場の僕はいつだってえらそーにして来れたんだ。一人で作品を作り続ける君に刺激されて、今度の二人展の映像を撮りに先日、町に出ました。キャメラを自分でまわすなんて、実に5年振りです。そして、うすうす気付いてはいたのですが、僕が生活しているこの世界には撮るべきものなど何もないと改めて実感させられました。僕は、はしゃぎまわる子供も、想いを込めて歌うストリートミュージシャンも、肩を組んでフラフラ歩くおっさんも、コンビ二も、公園も、猫も、空も、そんなもの撮りたくない。ましてや人に見せたくもない。では何を撮るべきか、何を見せるべきか、どんな映像なら君の作品と対峙させられるか、僕が必死で思考した映像のかたまり、楽しみにしていてください。大阪のみなさまにはぜひ、僕たち二人のまじりっけのない作品を見に、ギャラリーwksまで足を運んでいただきたいと思います。名古屋からでも、東京からでも足を運ぶべきだと思われます。8/21~9/9までです。それでは今回はこのへんで。君と新たな作品を「また」一緒に作れることがうれしくてしょうがありません。親愛なる、二人の相棒へ  追伸、「また 生まれてきてくれて ありがとう」 やっぱり二人展のこのタイトル、いいですね。
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